医療事務員のブログ

若手医療事務員が日々感じたことを書き残します。

ICTを利用した死亡診断を行う際の条件について

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厚生労働省は、各都道府県知事に対してICTを用いた死亡診断についてのガイドラインを公表しました。
過疎と高齢化が進む地方では、医師が遠方にいるなどで死亡診断が遅れて火葬、埋葬ができないという不安があるようです。
それを回避するため、要件を満たす場合のみ研修を受けた看護師のサポートの下、遠隔で死亡診断を行うことが認められました。
今回は、ICTを用いた遠隔の死亡診断について調べてみました。

ICTを利用した死亡診断って?

医師の死亡診断、遠隔で可能に スマホで看護師から報告:朝日新聞デジタル

 

流れは、自宅療養する患者宅などを看護師が訪問し、心停止や呼吸の停止、瞳孔の開きを間隔をおいて2回確認。外傷の有無なども観察し、スマートフォンやタブレット端末で遺体の写真などとともに医師に送る。医師は「死亡」と確認すれば、看護師に死亡診断書の代筆を指示し、医師はテレビ電話などを通じて遺族に口頭で説明する。

 

ICTを利用した死亡診断の要件

① 医師による直接対面での診療の経過から早晩死亡することが予測されていること

② 終末期の際の対応について事前の取決めがあるなど、医師と看護師と十分な連携が取れており、患者や家族の同意があること

③ 医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること

④ 法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め医師とあらかじめ決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること

⑤ 看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等の ICT を活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること


情報通信機器(ICT)を利用した死亡診断等ガイドライン

ガイドラインの中で説明されていますので、

一つずつ解説していきたいと思います。

①医師による直接対面での診療の経過から早晩死亡することが予測されていること

ICT を利用した死亡診断等を行うためには、医師が、対象となる患者に対し「生前に直接対面での診療」を行っていなければいけません。

しかも、死亡前 14 日以内に行われていることが必要です。

これは、直近で診察してないと、死亡することを予測することが困難であると考えられるためです。

「早晩死亡することが予測される」とは、以下のように要件が決められています。

  1. 死亡の原因となりうる疾患に罹患していること
  2. その疾患ないしその疾患に続発する合併症により死亡が予測されていること
  3. 突然死(発症後 24 時間以内の病死)ではないこと
  4. 生前の最終診察時に、医師が早晩死亡する可能性が高いと判断し、その事実を看護師、患者及び家族に説明していること

 

「重度の COPD で早晩呼吸不全で死亡することが予測される患者が、頭痛を訴えた後、突然死した場合」は、突然死にあたるため、ICTを利用した死亡診断等の対象にならないということです。

②終末期の際の対応について事前の取決めがあるなど、医師と看護師と十分な連携が取れており、患者や家族の同意があること

ここで言う十分な連携とは、以下のように用件が決められています。

  1. 終末期の際に積極的な治療・延命措置を行わないこと等について、ICT を利用した死亡診断等に関する同意書を用いて医師-看護師-患者及び家族間で共通の認識が得られていること。
  2. 常時看護師から医師に電話連絡できる体制が整っていること。

そもそも、ICTを利用した死亡診断を行う目的は、看取りに際して住み慣れた場所を離れて医療施設に入院したり、死亡後に遺体を長時間保存、搬送したりすることを回避することにあります。


今後は、高齢化に伴って件数が増えていくでしょう。
「終末期の際に積極的な治療・延命措置を行わないこと」については、確認されていることが必要ですね。

患者又は家族が治療・延命措置を希望している場合には、ICT を利用した死亡診断等の対象とはなりません。

Q) 患者と家族が、死亡時に ICT を利用した死亡診断等を行うことについて同意したものの、死亡後に家族が医師による直接対面での死後診察等を希望する場合。

A) 家族により ICT を利用した死亡診断等に関する同意が取り消されたものと考えられるため、ICT を利用した死亡診断等の対象とはならない。

 

 ③医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況にあること

直接診察をするのに時間がかかる場合のみ、ICTでの死亡診断をしてねってことです。

「医師間や医療機関・介護施設間の連携に努めたとしても、医師による速やかな対面での死後診察が困難な状況」とは、正当な理由のために、医師が直接対面での死亡診断等を行うまでに 12 時間以上を要することが見込まれる状況をさす。


12時間以上って、結構時間がありますので、たいていは直接診察ができる状況にあると思います。離島やへき地の訪問診療などを想定しているのでしょう。

さらに、12時間以上を要することを見込まれる理由を、ICTを利用した死亡診断等の記録に記載しなければなりません。

④法医学等に関する一定の教育を受けた看護師が、死の三兆候の確認を含め医師とあらかじめ決めた事項など、医師の判断に必要な情報を速やかに報告できること

以下のプログラムを含む研修を受けた看護師が必要です。

  1. 法医学等に関する講義
  2. 法医学に関する実地研修
  3. 看護に関する講義・演習

研修について検索してみましたが、出てきません。本年度中に研修を開始する予定だそうです。

研修対象の看護師は以下の要件です。

  1. 看護師としての実務経験5年
  2. その間に患者の死亡に立ち会った経験3例以上
  3. 実務経験のうち、訪問看護または介護保険施設等において3年以上の実務経験
  4. その間に患者5名に対しターミナルケアを行った経験を持つ看護師

 

⑤看護師からの報告を受けた医師が、テレビ電話装置等の ICT を活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握することなどにより、死亡の事実の確認や異状がないと判断できること

「テレビ電話装置等の ICT を活用した通信手段を組み合わせて患者の状況を把握」とありますが、具体的な機器の要件は以下のようになっています。

 

① リアルタイムの双方向コミュニケーション
・ LTE 環境もしくはそれに相当する動作環境
・ 映像と音声によるリアルタイムの双方向コミュニケーションが可能な端末

② 文書及び画像の送受信
 ・適切なセキュリティ下で文書及び画像を送受信できる体制
・ 文書や画像を送受信できる端末

 

「死亡の事実の確認」は、①~③の手順をリアルタイムで医師に報告しつつ、5分以上の間隔をあけて2回実施することで死の三兆候を確認します。

  • 心停止
  • 呼吸停止
  • 対光反射の消失

 

遠隔でICT死亡診断をする流れはこちらの12ページから見てください。

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20170921_2.pdf

まとめ

遠隔診療は今後さらに必要になると思います。それを想定し、遠隔診療の手段についても幅広く認めるような動きが出ています。
ICTは便利で、これから様々な場面で導入されていくと思います。しかし、医療の生死が関係する現場の中でどれだけの理解を得られるのでしょうか。